SAPプロフェッショナルコラム

連載-3

SAPユーザ企業のAI活用実践ガイド ― 定着・ROI最大化・リスク対策

【第3回】生成AIでSAP業務改革!
成功のポイントとリスク対策

ここ数年、生成AIはビジネスの現場で急速に注目を集めています。経営層からは「データドリブン経営を推進したい」という声がある一方、現場は日々の運用に追われ、AI活用の具体的な方向が見えないという課題が存在します。SAPシステムを利用している企業においても同様で、データは蓄積されているものの、現場で活かすにはまだ多くのハードルがあります。

生成AIがSAP業務にもたらす可能性と、導入時に注意すべきリスク、さらに安全かつ効果的に活用するためのポイントを整理します。

生成AIがSAP業務にもたらす可能性

生成AIの強みは「自然言語での対話」と「膨大な情報の要約・提案」にあります。
SAP業務においても、これまでのBIやRPAでは困難だった柔軟な支援を可能にします。特に効果が期待される領域は以下です。

1

業務効率化
レポート作成、データ要約、承認依頼の整理

2

意思決定支援
販売・在庫・購買データを基にした施策提案

3

現場サポート
自然言語でSAP操作をガイド

4

イノベーション促進
新しいビジネスモデルや製品アイデアの創出

5

顧客体験向上
パーソナライズされた提案(販売・サービス)

6

リスク管理・コンプライアンス強化
不正検知(購買・支払パターン分析)

これらの領域では生成AIを活用することで従来のシステム運用の枠を超えた業務支援が可能となります。

生成AIの便利さの裏に潜む“危機”

生成AIは便利なツールである一方、潜在的なリスクも存在します。
例えば、担当者が会議前に急いで承認依頼を整理しようと、購買条件をコピーして生成AIに貼り付けた。その瞬間、情報は外部へ。
取引先情報や契約条件が外部サーバーに送信され、学習データとして残る可能性があります。

実際、2023年3月には海外の大手電子メーカーが社内コードや会議情報を生成AIに入力したことで情報漏洩が発覚し、利用禁止措置が取られました。
法律事務所や金融機関でも、顧客情報を誤って入力するコンプライアンス違反リスクが顕在化しています。

生成AIの導入により、SAPユーザが直面しうる具体的リスク

●BPマスタ(顧客・仕入先情報):取引先名、住所、銀行口座情報

●購買条件テーブル:割引率、支払条件、契約価格

●FI/COデータ:原価、利益率、財務情報

●HRモジュール:従業員の住所、給与情報

これらは企業の機密情報であり、外部AIに入力された瞬間に情報漏洩のリスクが生じます。

さらに、生成AIはハルシネーション(誤情報の生成)※を起こす可能性もあります。
「存在しない取引先コードや誤った税率を提案し、そのまま設定してしまう」といった事象は、監査上の指摘や業務トラブルにつながりかねません。

※ハルシネーション:AIが事実に基づかない情報を生成する現象のこと

SAP業務における安全な生成AI導入の3ステップ

生成AIを安全かつ効果的にSAP業務に取り入れるために、以下のステップを推奨します。

Step1:入力禁止情報リストの策定

・BPマスタ、購買条件、財務データ、個人情報など、外部AIに入力すべきでない情報を明確化する

Step2:SAP BTPを介した安全な連携

・SAP BTPを活用し、社内ガバナンス下でデータ処理を実施
・外部サービスとの接続を制御可能

Step3:Explainable AI+権限管理の強化

・AIの提案に判断根拠を表示
・API権限を最小化し、操作範囲を制御

安全かつ効果的に生成AIを活用するために

生成AIは、現場業務のサポートや経営層の意思決定加速に大きな可能性を持っています。
しかし、その導入には情報漏洩や誤情報生成などのリスクを前提としたガバナンス設計が不可欠です。
こうしたリスクと導入課題を整理するため、NHSでは現場と経営の両面を対象としたワークショップを提供しています。
安全かつ効果的に生成AIを活用する第一歩として、まずは自社業務における優先領域の特定とリスク整理から始めませんか。

【補足情報】

今回取り上げた生成AIは、主に「自然言語で対話し、要約や提案を行うAI」です。
一方、第5回で取り上げるXAI(Explainable AI)は、需要予測や与信判断などを行う機械学習モデル全般について「なぜその判断に至ったのか」を説明するための仕組みを指します。
つまり、生成AIは“新しいインターフェース”であり、XAIは“AIの判断プロセスを可視化するための技術・設計”という位置づけになります。


  • 次回:「AI人財不足でも始められる!SAPユーザ企業の現実的な5つの解決策」
    AI人財が十分にいない企業でも、現場主導でAIを進められる5つの現実策を整理します。

連載-3

SAPユーザ企業のAI活用実践ガイド ― 定着・ROI最大化・リスク対策

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