SAPプロフェッショナルコラム
連載
SAP S/4HANA化後の次を創る - 運用保守の延長からAIで攻めのITへ
安定運用が目的化するIT部門の現実
止めないITは、変われないITなのか?
日々の安定運用に追われ、変化を考える余裕がない――そんなIT部門の現実に、私たちは向き合います。
SAPシステムが安定し、業務が滞りなく回っている――それはIT部門にとって大きな成果です。しかし、立ち止まれば別の現実が見えます。「安定」が、いつの間にか“目的”になっていないでしょうか。そして、その「安定」が競争力を失う「停滞」を生んでいるとしたら?
「止めないIT」から「活かすIT」へ
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- 多くの企業ではSAP S/4HANA化を経て基幹システムが刷新されました。かつてIT部門の最優先は「障害ゼロ」「安定稼働」。その結果、ITは“守りの要”としての地位を確立しました。ところが今、経営層の期待は変わっています。
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「データをもっと経営に活かしたい」
「現場の判断を早くしたい」
「生成AIをどう使えばいいか考えてほしい」 - “安定”が最適解だった時代から、「変化」を前提に動ける組織への転換が求められています。
SAP S/4HANA化のゴールは“運用安定”ではない
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ある製造業の情報システム部長・山田氏(仮名)。
2年前にSAP S/4HANAへの移行を完了し、運用保守はSIerに委託しています。システム障害は減り、業務は滞りなく進む。しかし経営会議で言われた一言が胸に刺さります。 - 「システムは安定しているけど、投資対効果が見えない。」
- さらに耳にしたのは、競合他社がAIでサプライチェーンを最適化し、リードタイムを大幅に短縮したというニュース。
- 「なぜうちだけ攻めのITに進めないのか?」
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SAP S/4HANA化は「業務標準化」「システム近代化」を目的にして進められました。しかし、その後の「データ活用」や「業務改善」には踏み出せていない――。
この悩みは、多くのSAPユーザ企業に共通しています。
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ある製造業の情報システム部長・山田氏(仮名)。
SAPデータには、まだ“眠る知恵”がある
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- 販売実績、購買履歴、在庫、品質、人事情報…。企業のほとんどのデータは、SAPシステムの中にあります。にもかかわらず、それらが「経営判断」や「業務改善」に十分に使われていない理由は何でしょうか?多くの場合、次の2つの壁があります。
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●データ構造が複雑すぎて、現場では扱えない(≒データサイエンティスト不在)
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●抽出できても、“業務の文脈”で解釈できない
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SAPシステム特有のテーブル構造や業務ロジックを理解していなければ、数字を正しく読み取ることすら難しいのです。
だからこそ、「SAPシステムを理解したうえでデータを活かす」視点が欠かせません。ここにAI活用やSAP BTP連携の出発点があります。
「運用の次」を描くための第一歩
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NHSは長年、SAPシステム導入・運用の現場を支えてきました。
その中で気づいたのは、「安定運用」と「価値創出」は相反しないということ。むしろ、安定したSAPシステム基盤があるからこそ、AIやデータ分析を組み合わせて“攻めのIT”に転換できるのです。 - 私たちは、次のステップを提案しています。
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1運用データの見える化 ― 運用ログやジョブ履歴をAIで可視化
2業務データの意味づけ ― SAPシステム内データを“業務単位”で再整理
3AIをスモールスタートで導入 ― PoCではなく、現場業務に溶け込ませる
4AIネイティブな運用へ ― SAPシステム×AIの融合で新しいオペレーションへ
- AI導入は“未来の構想”ではなく、「安定運用の延長線上にある次のステージ」として始められます。
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NHSは長年、SAPシステム導入・運用の現場を支えてきました。
守りのITからの卒業
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安定運用はIT部門の誇りであり、企業の強さの証です。
しかし、その先にあるのは「データを活かし、意思決定を変えるIT」。AIやSAP BTPは、そのための“手段”にすぎません。重要なのは、「IT部門が変化をデザインできるかどうか」。
そして、その変化を無理なく支援する伴走者がいるかどうかです。 - NHSは、SAPシステムを知り尽くしたSIerとして、AIを現場に落とし込み、“動くデータ活用”へ導く共創を始めています。
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安定運用はIT部門の誇りであり、企業の強さの証です。
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- 次回:「AIがSAPシステムをどう変えるか」
- SAPシステムにAIを組み込むことで、企業の意思決定はどう変わるのか。その“動くAI”の実像に迫ります。
